同じサイズのタイヤでも「雨」に強い弱いが存在! ウエット性能の差はどこで生まれるのか? (2/2ページ)

ドライとウエット路の性能はトレードオフ関係にある

 ウエット性能を謳い文句とするタイヤは、いい換えれば排水性能を高く設定したタイヤのことである。では、排水性能はどうやって決まるか、ということだが、これはトレッド面に占める溝面積(正確には溝容積)の大小によって決まってくる。当然ながら、溝面積は大きいほうが排水性能に優れることになる。タイヤのトレッド面は、接地面(陸=ランド)と溝(海=シー)で構成されるが、この両者の比率を表すシーランド比という言葉がある。当然、シー(溝面積)の大きな方が排水性能には優れるが、ドライ舗装路はランド(陸、ブロック面積)の大きいほうがグリップ力に優れることになる。

 言ってみれば、ドライ舗装路面とウエット路面は、二律背反する性能が求められることになり、ハイグリップ力を特徴とするスポーツタイヤは、その代償として優れたウエット性能は抑えられがちとなり、その逆に、ウエット性能を特徴とするタイヤはドライ性能に多くを望むことができない現実がある。とは言うものの、トレッドデザインやトレッドコンパウンドの工夫により、ハイグリップ力だが平均以上のウエット性能、ウエット性能に優れるがドライグリップ力も平均以上というプレミアムな性能を持ちタイヤが開発・市販されているのが現状だ。

 一方、経済性(ロングライフ性、燃費性能)や居住性(乗り心地、騒音)を重視したエコタイヤが存在するが、結局のところ、どの性能領域を重視するかで、タイヤの特徴、性能は決まってくる。エコタイヤは、ふつうに走る分(いわゆる攻めた走りではない)において、長持ちして音も静か、乗り心地もマイルドで、雨の日も安心して走れる、という総合バランス型のタイヤとして仕上がっている。これ自体が大きな製品特徴で、自動車を生活の道具、欠かせぬ移動手段と考えている人にとっては、要求される各性能は実用上十分、そして懐にも優しいタイヤ、という位置づけである。

 ちなみに、排水性能が溝容積で決まることは理解いただけたかと思うが、タイヤ溝深が1.6ミリ以下になると車検に通らない(不合格)理由は、想定される一般の雨天走行で、溝による排水性能が不十分な状態となり、安全に雨天走行ができないと判断される溝深と判断されたためである。

 ちなみに、WEC用のレーシングタイヤでは、軽くぬれたウエット路面も問題なくこなしてしまうスリックパターンのインターミディエイト仕様(ミシュラン・ハイブリッド)が存在するが、これはトレッドコンパウンドの質によるグリップ力の確立で、排水までいかない状況のウエット路面で威力を発揮する設定だ。


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