ちょっとやそっとじゃイライラしない! 運転者をナゼか穏やかにさせる「癒やし系」クルマとは (2/2ページ)

スペックではなくクルマのもつ”個性”を楽しむ

 動力性能に余裕があるのに、不思議と穏やかな走りに徹したくなるクルマとして、今や電動車のみのラインアップとなったボルボXC60がある。ただし、それにはちょっとした条件があって、前席に装備されたリラクゼーション機能=マッサージ機能を作動させたときにより一層、そう感じさせるのだ。もみ玉風の見事なマッサージ機能は、身も心もほぐしてくれる心地よさがあり、運転も自然に穏やかになろうというもの。

 筆者自身、ボルボのリラクゼーション機能付きのクルマをテスト運転するときは、できる限り作動させ、その恩恵に預かり、自然とリラックスした運転に没頭するようにしている。いや、意識せずにそうなるのである。

 シートや乗り心地によって、無暗に飛ばす気にならなくなるクルマとして、ルノー・カングーがある。本国では働くクルマ、商用車としても活躍する超実用車だが、シートのソファのようなかけ心地、大海を行く船のようにゆったりとした、しかし快適感抜群の乗り心地と、穏やかなステアリングフィールや動力性能がもたらす走りのキャラクターによって、誰もが飛ばす気にならない”才能”を持ったクルマの代表格とも言える1台である。

 中古車でしか買えないものの、先代シトロエンC3も運転席に座り、走り出しただけで心が穏やかになる、ふんわりとした、どこかなつかしささえ感じさせる古き良き乗り味を持つフランス車と言っていいだろう。

 が、たとえワゴンRスマイルやソリオのようなクルマに乗っても、どうしても飛ばしてしまう……という人なら、いっそ旧車に挑戦してみてはどうだろう。たとえば、自分より長く生き抜いてきたであろうオリジナルミニ、オリジナルビートルなど、クルマをいたわりつつ!? のんびりと走るのが似合うクラシックな実用車たちである。

 そうしたクルマは、のんびり、ゆっくり走っていても、周囲からあたたかい目で見られるはずである。それこそクラシックなオープンカーなら、さまざまな意味で、広い心を持っていないと所有することさえできなかったりする。

 もちろん、どんなハイパフォーマンスカーであれ、高速道路の走行車線をのんびり悠々と走る姿は、それはそれでカッコいい。人生の余裕さえを感じさせてくれるではないか。以前、秋の箱根の山道を、紅葉の風景を楽しみながらゆったりと走る、老夫婦が乗ったポルシェ911カブリオレを見たことがあるのだが、じつに羨ましく、自分もそのように歳を重ねたいと思ったものだ。クルマが人の心を広くしてくれるケースもあるにはあるが、自身の心が広いこと、余裕ある生き方をしていること、そして、1990年代に日産自動車×ホイチョイプロダクションのTV番組にもあったような”上品ドライバー”であることが、安全で快適なカーライフを楽しむための必須条件ではないだろうか。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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