普通に買った人が怒りたくなるほどお得な特別仕様車! じつはメーカーの苦肉の策だった (2/2ページ)

ライバルの存在が特別仕様車を新たに誕生させるイタチごっこ

 セレナがXVエアロを設定した背景には、ライバル車の動向がある。まずヴォクシーとノアは、2022年1月13日に次期型へフルモデルチェンジされ(エスクァイアは廃止)、現時点では従来型を大幅値引きで販売している。売れ筋になるヴォクシーの特別仕様車、ZS煌めきIIIの価格は290万9500円(8人乗り)だから、セレナはこれを下まわる289万3000円で、特別仕様車のXVエアロを投入した。

※写真は現行モデル

 ステップワゴンも2022年にフルモデルチェンジを控える。新型に切り替わるヴォクシー&ノアに対抗するため、ステップワゴンは、近々ティザーキャンペーンを開始する予定だ。

 このように2022年になると、セレナにとって宿敵のヴォクシー&ノア、ステップワゴンが立て続けにフルモデルチェンジを行う。販売面で不利になることは確実だから、ハイウェイスターに加えて、標準ボディにエアロパーツを割安に装着するXVエアロも加えるわけだ。今後のセレナはXVエアロを軸に、従来以上に買い得度をアピールしていく。

 以上のように特別仕様車は、その車種の売れ行きに不安な要素が生じた時に設定される。たとえばタントは2019年7月に現行型へフルモデルチェンジしたが、売れ行きが伸び悩み、発売直後でもN-BOXの届け出台数を抜けなかった。

 そこで同年12月には、メーカーオプションを追加した特別仕様車を、ベースのグレードと同じ価格で(つまり価格を高めずに)設定している。割安な特別仕様車を設定して、販売をテコ入れしようと考えた。先日発表されたばかりではあるが、N-BOXのように好調に売られている車種に、特別仕様車を用意することは珍しいのだ。特別仕様車は、人気のバロメーターと考えて良いだろう。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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