「楽しい」の感覚は人それぞれ! それでもあえて「走りが楽しい」と推せる国産車5選 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■運転するのが楽しい国産車をピックアップ

■KPCを搭載したマツダ・ロードスター990Sは運転の楽しさに没頭できる

■そのほか、WRX S4やシビック、フェアレディZ、GT-Rなども運転が楽しい

人馬一体の走りが楽しい軽量スポーツカーのロードスター

 運転の楽しさに優劣をつける意味はない。日本人としてはじめてF1レーサーとなった中嶋悟は、かつて、「軽トラックさえ運転を楽しめる」と語ったと伝えられる。走りをどう体感するかで楽しさは生まれ、また楽しいという感触は、人それぞれの価値観や見方から異なるからだ。

 それでも、最初に浮かぶのは、マツダのロードスターだ。ことにKPC(キネマティック・ポスチャー・コントロール)と呼ぶ電子制御を搭載した990Sは、上級車種を選ぶ理由を薄れさせるほど、運転の楽しさに没頭させる魅力がある。

 KPCとは、後輪サスペンションのアンチリフト設計を活かし、加えて旋回内輪のブレーキを適正制御することによって車体の傾きを抑え、旋回中の姿勢を安定させる機構だ。ハンドルをわずかに切りはじめたときから前輪が的確に進路を定め、旋回中も進路のぶれが少なくカーブ出口を目指せる。

 マツダは、KPCの制御と関係はないというが、直進性も落ち着きを増し、走行全体に安定し、安心が高まり、運転に没入できるのだ。KPCは、ロードスターの上級車種にも採用されているが、効果をもっとも実感できるのが990Sであり、装備に追加の必要が無ければ、廉価な990Sでロードスターの魅力を存分に味わえる。廉価車種なので、ロードスターへの身近さも高まる。

 つぎに、印象深いのはホンダ・シビックだ。3ナンバーの前輪駆動(FWD)車で4ドアセダンでありながら、ガソリンターボ車、ハイブリッドのe:HEVを問わず、壮快な運転を味わえ、5ナンバーの2ドアクーペ的な走行感覚がある。

 FWDでありながら、タイプRだけではなくシビックという4ドアセダンすべてでこの感触が得られるのも、50年という歴史に支えられ、積み重ねられた技術の成果ではないか。

 SUBARUは、BRZでFR(フロントエンジン・リヤドライブ)のスポーツカーに取り組んでいるが、2代目となったいまも成熟にはまだ道程がありそうだ。一方、WRX S4をサーキットで運転したとき、完成の域に達したと感じられる運転感覚に夢中になった。

 1972年にレオーネのエステートバンで4輪駆動(4WD)をはじめて採用し、3年後の1975年に乗用の4ドアセダンに4WDを設定して以降、磨き続けたAWD(全輪駆動)がWRX S4をここまで導いたのだと感動した。完熟の走りには年月が必要なことを教えてくれる一台だ。

 シビックもWRX S4も、いまはやりのSUV(スポーツ多目的車)ではなく、クルマの基本形といえる4ドアセダンで運転を楽しませるところに、実用性と走りの両立を叶えるセダンの価値を改めて我々に教えてくれる。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

新着情報