明らかに「ハズしちゃった」モデルもありました! マスタング50年に渡る8代の歴史を振り返る (2/2ページ)

第4世代の原点回帰でスタイリッシュクーペとして復活

 1979年に誕生したサードジェネレーションのマスタングは、それまでとは一転、直線を基調としたヨーロッパ感覚のデザインが大きな特徴だった。ピントなどと共通のフォックス・プラットフォームを採用し、ボディサイズはさらに小型化。フォード車としては初となるターボ仕様の140立方インチ(2.3リッター)直列4気筒エンジンを搭載したのも忘れてはならないトピックスだった。

 だが、このエンジンラインアップは、1980年モデルでは早くもそれが見直されてしまう。200立方インチ(3.3リッター)のV型6気筒と302立方インチ(5リッター)のV型8気筒という構成がそれで、後者には後にハイアウトプットを意味する「HO」のグレード名が与えられることになる。

 1983年にはコンバーチブルボディが初代モデル以来の復活を遂げ、1984年には現在でもお馴染みの、「SVO(Special Vehicle Operations)」による高性能モデルも誕生。このようにさまざまな話題を提供しながら、サードジェネレーションのマスタングは、最終的には1993年まで生産が継続されたのである。

 1994年から2005年まで販売されたフォースジェネレーションのマスタングは、初代モデルに回帰したとも思われるディテールを数多く持つエクステリアデザインが大きな魅力だ。プラットフォームは先代と同様に、小型車用のフォックス・プラットフォーム。実際にはそれを改良したものとされる。

 搭載エンジンは232立方インチ(3.8リッター)のV型6気筒と302立方インチ(5リッター)のV型8気筒の2タイプ。後者にはHOとコブラの異なるチューニングが存在した。また、1996年モデルではV型8気筒エンジンが281立方インチ(4.6リッター)に縮小され、その代わりにSOHC24バルブヘッドが与えられるチューニングを実施。同1996年には実に309馬力という最高出力を発揮するSVT製作による281立方インチ(4.6リッター)V型8気筒DOHC32バルブエンジンを搭載したコブラが、5速MTとの組み合わせで追加設定されている。

 リビングレジェンド。つまり「生ける伝説」をコンセプトに誕生したフィフスジェネレーションのマスタングは2005年に登場した。プラットフォームはこの新型マスタングのために新開発され、エクステリアデザインは、そのコンセプトをそのままに初代マスタングをより強く意識したものに変化。

 エンジンはベースモデルでも244立方インチ(4リッター)のV型6気筒SOHCに。高性能仕様のGTには281立方インチ(4.6リッター)のV型8気筒SOHCが搭載されている。アメリカ本国ではMTの選択も可能で、スポーティで手ごろなモデルとして、つまりマスタングのそもそものコンセプトを継承したモデルとして高い人気を誇ったという。

 2013年モデルでは2009年モデルに続きマイナーチェンジが実施され、灯火類のLED化などディテールの改良がここで行われた。

 続く第6世代のマスタングは、2015年モデルから2022年モデルまでが存在するから、まだ十分に新車としての記憶があるファンも多いだろう。エコブーストエンジンなど、さらに環境に配慮したパワーユニットを搭載。そして、これは日本市場にとっては画期的だった、右ハンドル仕様の設定など、大きな話題に満ち溢れたモデルだったが、残念ながらその正規輸入が開始される前に、正規輸入代理店のフォード・ジャパンは日本から撤退するという事態になってしまった。

 2022年9月、数えて8代目となるマスタングが発表された今、やはり望まれるのはフォードの日本市場への復活だ。

 ちなみにエンジンは、140立方インチ(2.3リッター)の直列4気筒と、305立方インチ(5リッター)V型8気筒の2タイプ。

 フォード・ジャパンが撤退するというニュースが流れる直前、オーストラリアでその右ハンドル仕様を試乗する機会があったが、右ハンドル化によるハンデはほとんどなく、自然なドライブとアメリカ車らしいダイナミックな走りが楽しめたことを今でも思い出す。フォードの日本へのカムバックを心から願いたい。


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
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