オールシーズンタイヤって「本当に使える」? ヨコハマ「ブルーアース4S AW21」を試したジャーナリストにド直球質問をぶつけた (1/2ページ)

ドライもウェットもスノーもしっかり走れるオールシーズンタイヤ

 日本ではここ数年、冬を前にするとオールシーズンタイヤがクローズアップされるようになりました。欧米では比較的ポピュラーな、夏タイヤとしても冬タイヤとしても機能してくれる、季節にかかわらず使えるタイヤ。一度でも試してみるとその有用性がはっきりと理解できるのですが、未体験の人はちょっと懐疑的な気持ちになるところがあるのかも知れません。

 そこでオールシーズンタイヤに関する皆さんの率直な疑問を、自動車ジャーナリストの嶋田智之さんに訊ねてみることにしました。

編集部:オールシーズンタイヤって、普通のタイヤとどう違うんですか?

嶋田:その呼ばれ方からも察せられると思いますが、シーズンを問わず使えるタイヤです。普段は夏タイヤと同じように使えて、雪が降っても走れる冬タイヤの領域もカバーできるタイヤ、と思っていただいていいでしょう。

 サーキットやワインディングロードなどのドライ路面でハイパフォーマンスタイヤのような強力な食いつきを見せてくれるわけではありませんし、凍結路や新雪が深く積もった場所でスタッドレスタイヤ並みの性能を発揮してくれるわけでもありませんが、乾いた路面も濡れた路面も、雪道でさえも結構しっかり走れます。もちろんすべての路面環境において注意深く走るべき、というのは大前提ですが。

編集部:積雪が多い地域に住んでるのならオールシーズンタイヤでも問題はないですか?

嶋田:推奨はしません。また、タイヤの販売店のスタッフの方も同じことをおっしゃることでしょう。たくさん雪が降る地域の方は、冬には雪道に特化して開発されたスタッドレスタイヤを履くことを強くオススメします。というのも、そもそもオールシーズンタイヤは、簡単にいってしまえば「普段は雪の降らないエリアのドライバーが年に何度か雪に見舞われたときの安全性を飛躍的に高めるタイヤ」として開発されてるようなもの。

 たとえば東京で雪が降ったときなど、予報が出ていたというのに夏タイヤのまま走ってスタックする人も少なくなく、交通は大混乱を起こします。もちろん降雪の程度にもよりますが、そんなときでもオールシーズンタイヤを履いていれば、スタックする可能性をかなりゼロに近づけられます。

 オールシーズンタイヤの雪道での性能は年々向上していますが、基本、そういうものだと思っていただくのがいいでしょう。

編集部:普通の夏タイヤと較べてコストが高いように思うのですが?

嶋田:一般的な夏タイヤの売価と比較すると、高価に感じることもあるかと思います。が、降雪地帯でもなければ滅多に使わないスタッドレスタイヤをもう1セット用意することを考えたら、いかがでしょう? タイヤの組み替えや交換、スタッドレスタイヤの保管サービスを利用している場合には保管料。そうした諸々の費用も省けます。コストは大幅に安上がりになると思いませんか?

 また、外したタイヤの保管に悩む必要もないので、気持ちもずいぶん軽くなるはずです。オールシーズンタイヤには、メリットがたくさんあるのです。

編集部:オールシーズンタイヤは走行音がうるさいって本当ですか?

嶋田:つい最近、ヨコハマの“ブルーアース4S AW21”というオールシーズンタイヤをテストしてきましたので、ここから先はそのときの印象をまじえながら進めていきたいと思います。確かにオールシーズンタイヤは、一般的な夏タイヤと較べて走行音が大きいといわれがちです。

 が、ブルーアース4S AW21は、都内の一般道でも雪道めがけて走っていった高速道路でも、意外なほどに静かでした。あれ? これってタイヤを履き替えてるんだよね? と、編集スタッフに確認してしまったほど。

 雪道を目指しての移動だったので当たり前ですが、じつはこのとき、別のブランドのオールシーズンタイヤを履いたクルマが同行していたので乗り較べてみたのですが、ブルーアース4S AW21は、はっきりと違いがわかるくらい静かでした。

 世の中にはこれより走行音が耳障りな夏タイヤだってあるのです。おそらく何も知らされずに走り出していたら、普通の夏タイヤだと思えたことでしょう。

編集部:まっすぐ走らない、曲がり方がだらしない、と聞いたことがあるのですが……?

嶋田:オールシーズンタイヤからそうした印象を感じられた時代というのが、確かにあったかのかも知れません。けれど、現在のオールシーズンタイヤには、そのあたりの性能に不満を覚えるようなものはあまり多くありません。

 ブルーアース4S AW21に関していうならば、まったく問題なしのレベルでした。高速道路の巡航はもちろん、追い越しをかけるときの一段階速いスピードでも、まったくリラックスしたまま走っていられます。

 路面が荒れてる場所にさしかかっても、姿勢が乱されることは少なく、またそんなときにも望外に乗り心地がよかったのです。乾いたワインディングロードでも、印象のよさは変わらず。しっかりとグリップして、きっちりと曲がってくれます。

 さすがにスポーツタイヤと較べればジワジワと滑り出す速度域は低めですが、その動きはちゃんと伝わってきてわかりやすいし、その後のコントロールもしやすく、ちょっとばかりスポーティに走りたい気持ちに応えてくれる懐の深さも見せてくれます。

 また、あらゆる局面で、スタッドレスタイヤでは感じがちなタイヤが路面と接するあたりでクニャクニャするようなフィーリングを感じることはまったくありませんでした。ますます一般的な夏タイヤを履いてるような気分にさせられたものでした。


嶋田智之 SHIMADA TOMOYUKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
2001年式アルファロメオ166/1970年式フィアット500L
趣味
クルマで走ること、本を読むこと
好きな有名人
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