再始動のランチアに期待しかない! コンセプトカー「Pu+Ra HPE」は随所に名車のDNAが息づいていた (2/2ページ)

随所に名車をオマージュしたデザインが光る

ストラトスの特徴を高次元で昇華させたデザイン

 フロントを見ると、ノーズはより先鋭的にセンターを突き出すことでスポーティさと近未来感を演出し、そこへ細いメッキモールを置くことでイタリア車らしいエレガントさを同居させているのが「巧い!」と思わせるところです。

 サイドでは、ストラトスの丸みを持ったドア面に対し、これをスパッと垂直でフラットな面とした点も大きな違いで、ここもまた最新のBEVとして空力性能を追求したものかと。ボンネットフードとともに、ブラックのラインが強いアクセントになっているのも見所です。

 リヤでは丸いテールランプがストラトスに準じていますが、ウイング形状も含め、リヤパネル全体がより整理されたシンプルな造形に。ファッションの世界をインスパイアしたという新しいロゴは、流行の二次元的なグラフィックでなく、繊細さとモダンさを併せ持たしたところに感心します。

 一方、「ホームフィーリング」のコンセプトでまとめられたインテリアは、インパネやセンターコンソールなど円形がモチーフになっており、これはコーヒーテーブルから着想したそう。ルーフにも応用したこの円形は、居心地のいい室内環境を目指したコンセプトにうまく沿っています。

 また、カッシーナ社との協力によるシートは、同社のアームチェアからインスパイアされたもの。スポーティカーでありながら、従来のスポーツシートとはまったく異なる形状が新鮮で、もちろん鮮やかな黄色にも同じことが言えます。

直線と円形で新しいデザインテーマを作る

 ボディカラーは「プログレッシブグリーン」が印象的ですが、この緑と内装の黄色の組み合わせは、ストラトスのストライプのグリーンとホイールのイエローを想起させるもので、ブランド再生としても巧いカラーリングだと思えます。

 さて、こうしてエクステリアとインテリアをチェックしてみると、「Pu+Ra HPE」のデザイン的な見所は、シャープなラインと円形の組み合わせによる幾何学形のようなシンプルさにあるようです。

 これは同じイタリア車でも、フィアットともアルファロメオとも異なるまったく新しいデザインテーマですが、初代イプシロンやテージスなど、個性的なクルマを輩出してきたランチアらしい発想とも言えます。このテーマを量産車にどう落とし込むか、まずは2024年登場予定の次期イプシロンに期待です。


すぎもと たかよし SUGIMOTO TAKAYOSHI

サラリーマン自動車ライター

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いすゞFFジェミニ4ドア・イルムシャー(1986年式)
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オヤジバンド(ドラムやってます)/音楽鑑賞(ジャズ・フュージョンなど) /カフェ巡り/ドライブ
好きな有名人
筒井康隆 /三谷幸喜/永六輔/渡辺貞夫/矢野顕子/上原ひろみ

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