かつてのスーパースポーツ「2000GT」や「フェアレディZ432」などが採用! 「マグネシウムホイール」が何十年たっても普及しないワケ (2/2ページ)

マグネシウムの弱点は耐腐食性

 まず、素材そのものだが、元素表で見れば、マグネシウムが12番元素、アルミニウムが13番元素と隣同士だが、比重はマグネシウムが1.7でアルミニウムが2.7とけっこう違っている。マグネシウムはアルミニウムに対して約6割程度の重量で、軽量性という意味ではマグネシウムが勝る状況にある(ただし、比強度はマグネシウム42GPaに対してアルミニウム70GPaとアルミニウムのほうが強い)。

 ただし、これらはあくまで純マグネシウム、純アルミニウムの場合で、実際、工業製品として作られる場合には、マグネシウム合金(アルミニウム、亜鉛などとの合金)、アルミニウム合金(銅、マンガン、ケイ素、マグネシウム、亜鉛、ニッケルなどとの合金)という形で、本来の素材が持つ特性上の弱点を補うかたちで実用化されている。

 こうした意味では、マグネシウム合金もアルミニウム合金も実用上の特性には大きな違いがないようにも思えるが、じつは、マグネシウムは決定的な弱点を持っている。水、アルコール、酸と反応しやすく、耐腐食性が低いということである。もちろん、合金化によってこれらのウイークポイントは抑えられるようになっているが、基本的に持つ特性を根底から拭い去ることはできない。

 たとえば、ホイール素材として使った場合だが、腐食を避けるために塗装を施すが、マグネシウムという金属は塗装との密着性があまりよくなく、塗装の剥がれから金属面が外気と接触するとそこから腐食が進み、しかも内部に進行するというありがたくない特徴を持っている。簡単に言えば、古くなったマグネシウムホイールの利用にはリスクを伴うということである。実際、軽いことからレーシングカーのホイールとして使われているが、時間の経ったマグネシウムホイールの使用は避けられ、廃棄される例がほとんどである。

 マグネシウム合金ホイールは、経時変化に伴う品質の保証(耐腐食性、耐振動性、耐衝撃性の確保)が難しく、量産車レベルでの使用であれば特性的にもアルミニウム合金ホイールで代用が効くことから、積極的な採用にいたっていないと判断してよいだろう。軽さは魅力だが、耐腐食性を狭い領域での実用化にとどまっているのが現状だ。


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