本命がまさかの10ベスト外! そこで選んだのは元祖ハイブリッドのプリウス!! 2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤーで10点を入れたクルマとその理由【渡辺陽一郎編】 (2/2ページ)

プリウスに10点入れた理由とは

 ところが、インプレッサは10ベストカーに入らなかった。クロストレックは選ばれたが、私の考えではインプレッサの派生車種だ。インプレッサを差し置いて、クロストレックをCOTYに選ぶことは筋違いだと思う。

 そこでクロストレックも除外すると、私にとっての1位はプリウスとなった。新しいクルマ作りに挑み、それがユーザーのニーズにも沿っているからだ。

 ちなみに初代プリウスは、世界初の本格的な量産ハイブリッド車として1997年に発売されたが、今ではトヨタの大半の売れ筋車種にハイブリッドが搭載される。コンパクトカーのヤリスハイブリッドは、WLTCモード燃費が36km/Lに達しており、広い車内が欲しければシエンタやノア&ヴォクシーなどのミニバン、カローラクロスのようなSUVにもハイブリッドが搭載される。

 その結果、ハイブリッド専用車のプリウスを選ぶメリットは薄れ、登録台数も下がった。2010年と2012年のプリウスは、1カ月平均登録台数が2万6000台を超えたが、2022年は2700台少々だから約10分の1に減った。

 そうなるとプリウスを廃止する方法もあったと思うが、トヨタの技術力を象徴する存在で、いまでは長い伝統に支えられて認知度も高い。廃止は避けたい。

 そこで新型プリウスは、「ハイブリッドの付加価値」に力を入れた。具体的には、まずモーター駆動の採用に基づく滑らかな加速と高い瞬発力が挙げられる。そこで新型は、主力エンジンの排気量を2リッターに拡大して動力性能を向上させた。全高は先代型に比べて40mm低く、低重心化によって走行安定性も高めている。

 外観は、天井を下げて前後のピラー(柱)とウインドウを寝かせたから、5ドアクーペ風になった。過去を振り返ると、トヨタにはカリーナEDなど背の低い4ドアハードトップが多かったが、近年では廃止された。その一方で欧州車には、天井の低い4ドアや5ドアが増えた。新型プリウスの外観は、背が低くカッコイイ日本車の失地回復とも受け取られる。

 以上のようにプリウスは、ハイブリッド専用車の伝統を継承しながら、燃費ではなく付加価値を発展させるフルモデルチェンジを行った。これはいままで見られなかったクルマ作りで、今後の日本車を存続させる上でも優れた前例になる。将来の日本車に向けた貢献も含めて、プリウスをイヤーカーに選んだ。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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