自走でもっとも高い所まで登ったクルマはなんとポルシェ911! ジムニーの世界記録を突破した (2/2ページ)

ポルシェ911がクロカンでも世界を席巻

 さらに、2台のポルシェは合成燃料「eFuel」を使ったことも大きなトピックとされています。こちらは「再生可能エネルギーを使用して水と二酸化炭素から作られており、eFuelの製造プロセス中に回収されたCO2は、自動車の使用中に排出されるCO2とほぼ同じであるため、内燃機関の正味のCO2ニュートラルな使用が可能」だと、環境面に敏い同社らしい取り組みにほかなりません。

 さて、記録を樹立したエディスをドライブしたレーサーのロマン・デュマは「この経験は決して忘れません。これまでクルマが行ったことのない場所を運転するのは、並外れた感覚でした」と、火山を降りたあとで語っています。彼はポルシェを駆ってル・マンを3度も戦っている強者ですが、やっぱりマイナス20度にもなる荒地を走り続けるのは相当タフだったようです。

 一方、ポルシェに46mの差で抜かれたジムニーですが、上述のとおり21年落ちの中古車の足まわりを強化、大径タイヤの装着、そして大気の薄くなる高地対策としてスーパーチャージャーを装備していたとのこと。

 スズキのワークスとか、どこかの探検チームではなく、Gonzalo BravoとEduardo Canalesという地元チリの若者ふたり組による挑戦でした。ジムニーはチリの軍用車に採用されていたらしく、ふたりは中古車を払い下げでもしてもらったのかもしれません。

 で、最初の挑戦は猛烈な吹雪によってリタイヤ、二度目はオイルタンクが過熱、エンジンが出火してしまうトラブルで断念。ようやく、三度目の挑戦で、それまでJEEPがもっていた6646mという記録を抜き去り、世界記録を樹立というド根性ストーリー。

「もっとも難しいセクションは6400m地点で1.6kmほど続く氷河を横断するところでした。氷河には巨大なクレバスがいくつもあり、数日前に降った雪のせいでクレバスは埋まってしまい、雪の下がどうなっているのか判断できなかったことでした」と、Gonzalo氏。こうなると、クロカン王者とかどっかのワークスチームとか関係なく、よくぞご無事でと胸をなでおろさずにはいられません。

 ポルシェやJEEPの(ふんだんな予算やスタッフを注ぎ込んだ)挑戦も賞賛に値するものには違いありませんが、チリの若者たちのド根性に胸を熱くする方も決して少なくないでしょう。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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