軽自動車にも付いているのになぜ? 高額車でもパドルシフト不採用の現行車が存在するワケ (2/2ページ)

ヤリスは日本仕様にのみパドルシフトを用意しない

 ではなぜ、そうしたクルマにパドルシフトが装備されないのか? 自動車メーカーに話を聞くと、「それはニーズが大きい」とのこと。アルファードのような高級ミニバンのドライバー(ショーファー)にとって、パドルを操作してスポーティに走るシーンなどめったになく、どうしてもスムースに減速、加速したければ、シフター(シフトレバー)のマニュアルモードが用意されていますよ、ということだ。

 ニーズという意味で分かりやすいのが、ヤリス。じつはパドルシフトが用意されていないのは日本仕様だけ。たとえば欧州仕様では、しっかりパドルシフトが装備されているのである。

 これこそニーズで、CVTにまだ馴染みのない、MTを好む欧州のユーザーにより自身で操っている感覚を持たせるとともに、CVT独特のラバーバンドフィールを感じさせない、メリハリある走りを楽しんでもらいという、仕向け地のニーズに対応する回答が、パドルシフトの装備というわけだ。構成部品はパドルスイッチ、ワイヤーハーネス、そして制御システムとシンプルで、原価はごく安価(数千円!?)。それでもニーズのない国向けには、ほかの部分にお金をかけたほうがよい……という考え方なのである。

 ボルボの場合は、やはりジェントルなドライバーに愛され、安全第一のメーカーゆえに、スポーティ志向と受け取られかねないパドルシフトに消極的なのも、頷けるというものだ。

 ちなみに、パドルシフトによる減速効果は、アクセルオフで回生を発生させ、減速機能が働くHVなどの電動車よりも、一般的なガソリン車のほうが効果大と言われている。

 とはいえ、個人的には、パドルシフトのないクルマは愛車候補の対象外。繰り返すが、スムースな減速、スピードコントロール性が得られるということは、わが家のように愛犬を後席に乗せる機会が多い使い方にはうってつけ(赤ちゃんを乗せる場合も)。ブレーキパッド、ローター、タイヤの減りが少なくて済んでいる経済性にかかわるメリットと合わせ、スポーティーな運転をしないユーザーにも、ぜひともお薦めしたいクルマの装備、機能なのである。もちろん、AT、CVT、デュアルクラッチミッションのクルマでも、よりメリハリある、クルマを操作している感覚が得られるファンな走りが可能になり、たとえSUVやミニバンだろうと、大きなメリットになりうると思っている。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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