愛され続ける理由は「初代」にあった! 何代も続く「名家カー」のルーツを探る (3/3ページ)

軽自動車界のレジェンドは初代にヒミツあり!

 つい最近、デビューしたスズキの軽自動車がワゴンRスマイル。もちろん、スズキの看板モデルでもあるワゴンRの背をちょっぴり高くし、両側スライドドアを設けた、ダイハツ・ムーヴキャンバスのライバル車であることは言うまでもないのだが、振り返れば、1993年に発売された初代ワゴンRは、日本の軽自動車界にとってまさに革命的モデルでもあったのだ。

 今ではワゴンRが属するハイトワゴン系や、スペーシア、N-BOX、ルークス、タントがしのぎを削るスーパーハイト系軽自動車が勢ぞろいし、もっとも人気で売れているモデルになっているが、初代ワゴンRがデビューした1990年代初頭以前の軽自動車は、セダンタイプか商用車派生のワンボックスしかなかった時代である。そこで軽自動車メーカーのスズキが、いわゆるハイトワゴンというジャンルの、つまり背が高く、フラットフロアの、室内空間の余裕と乗降性の良さを持つ初代ワゴンRを”発明”したのである。プラットフォームは4代目セルボのものを使っているが、フロアの二重構造(カサ上げ)によって前後席のフラットフロアをいち早く実現。運転席側リヤドアのないモデルもあったのが、ユニークだった。

 1998年にはキープコンセプトの2代目に移行。2003年に登場した3代目は、初代を思わせるスクエアなデザインで登場し、軽自動車の市販車として初の直噴ターボも設定。2008年に4代目、2012年に5代目、そして2017年には現行型が登場。全方位で洗練度を極め、ISG(モーター機能付き発電機)を用いる、モーターアシストの作動域を拡大したマイルドハイブリッドモデルがメインとなっている。

 ちなみに初代ワゴンRのボディサイズは全長3295×全幅1395×全高1640~1695mm、ホイールベース2335mm。最新モデルは全長3395×全幅1475×全高1650mm。ホイールベース2460mm。全長と全幅の拡大は、もちろん、軽自動車の規格の進化となる。走りの爽快感、気持ち良さ、前方視界の良さは、ハイトワゴン軽のパイオニアならではの意地を見せ、クラストップレベルと思えるほどだ。

 そんなワゴンRに、今ではスーパーハイト系のスペーシアとワゴンRの中間的全高と両側スライドドアを備えたスマイルが加わったのだから、スズキの軽自動車ラインアップの選択肢が大きく広がったことになる。言い方を変えれば、両側スライドドアモデルの追加で、それまでハイト系ワゴンとしてリヤヒンジドアを貫いてきたワゴンRの歴史が、大きく変わったとも言えるのだ。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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