歴代すべてが成功! ついに4代目が登場するミニバンの金字塔ノア&ヴォクシーをまるっと振り返り (2/2ページ)

3代目は上級モデルを思わせるほどの質感へ進化

 現時点で現行型となる3代目がデビューしたのは2014年。とくに人気絶頂のヴォクシーは、ヴェルファイアを思わせる堂々とした顔つきを備えることになった。5ナンバーサイズを基本としつつ全高を25mm低め、しかし室内高は新開発の低床プラットフォームにより60mm拡大。先代ではクラスでもっとも短かったホイールベース(3列目席のニースペースで不利)を25mm延長。さらに、2リッターガソリンエンジンとともに、プリウスαから譲り受けた1.8リッターエンジン+2モーター、システム最高出力136馬力のTHS IIを採用する、ガソリン車比約37万円高のHVモデルを新設定したことも大きなニュースだった。当時の開発陣に聞いたところ、スライドドアまわりなどのスポット増しを含むボディ剛性の向上も、走りに効く大きな進化だったという。

 3代目はパッケージ面でも大いなる進化を遂げた。それは、アルファードやエスティマに採用されている2列目席スーパーリラックスモード(ロングスライド機構)を新採用したこと。具体的には3列目席を楽々操作で左右ハネ上げ格納し、最大810mmのスライド量(8人乗りベンチシートのスライド量は580mm)を持つ2列目キャプテンシートを中寄せし、リヤホイールハウスを避けて最後端位置までロングスライドすることで独立4座のスーパーサルーンに変身させることができるのだ。その際の2列目席ニースペースは、身長172cmのドライバー基準で驚愕の約700mm(通常時約300mm/セレナ約300mm、ステップワゴン約355mm=当時)。さすがにエスティマのスーパーリラックスモードの約780mm、アルファード&ヴェルファイアの同約800mmにはかなわないものの、クラス最大であることは間違いなく、前席がはるか遠くに感じられたものだ。

 当時の筆者の試乗リポートを引っ張り出そう。

「ガソリン車の16インチタイヤを履くエアロモデル=ヴォクシーZSの走りは、先代エアロモデルの乗り心地は硬すぎた……というユーザーの声に応え、標準の15インチタイヤ装着車よりわずかに硬めにはなるものの、先代よりずっとマイルドな快適指向。ファミリーカーとしてよりふさわしくなっている。操縦感覚は無駄な動きのない軽快ですっきりしたもの。腰高感は最小限でカーブや山道、高速レーンチェンジ時の姿勢変化、ロールもじつに穏やか。安心感の高い操縦性に徹している。動力性能は市街地ではもちろん、高速走行でも十二分。街乗りベストに割り切った感ある!? HVモデル(デビュー当時)とは中高速域で段違いの余裕を見せてくれる。しかも全体的な静粛性もまた大きく向上。とくにロードノイズの遮断は見事で、長距離走行時の快適度は格段に向上したと言えそうだ」とある。

 そんな3代目ノア&ヴォクシーは2017年7月にマイナーチェンジ。ノア&ヴォクシーともに顔つきは一段と迫力&押し出し感あるものになり(ノアの顔はほぼ巨大な鏡)、エアログレードはなんと「ハ」の字がテーマの台形スタイリング! これまで以上にスポーティ&アグレッシブなスタイリングに変身したのだった。

 しかも、フロントドアにシール材を追加してロードノイズなどの遮音性を高め、空力パーツを追加し、ボディ剛性を向上させ、ダンパーまで改良を行い、快適性、静粛性、乗り心地、操縦安定性にまで手が入っているのだからすごかった。ただ、燃費性能は不変。やっとのことで採用された先進安全運転支援装備のトヨタセーフティセンスは今や最小限の機能の「C」(当時)。よって全車速追従機能付きクルーズコントロール(ACC)、ブラインドスポットモニターなどは装備されないのである(3代目最後まで)。このあたりについては時代遅れの感は否めない。

 とはいえ、走ればビッグとも言えるマイナーチェンジの効果は歴然。当時の筆者の試乗リポートによれば、「走り出してまず実感できるのがロードノイズの低減だ(1列目席)。ゲリラ豪雨の中の走行も経験したが、フロントドアのシール材追加効果はマイチェン前のユーザーならより実感できるに違いない(水しぶき音を含む)。HVのエアログレードの16インチタイヤ装着車の乗り心地は依然硬めだが、ボディ剛性の向上、ダンパーの改良が功を奏し、足がしなやかに動くようになり、乗り味の上質感はワンランク高まった印象だ。動力性能は80km/h程度までならガソリン車と同等だが、高速追い越し加速、登坂路では依然、ガソリン車が優位。一方、ガソリン車は全域で必要十分な加速力を発揮」

「15/16インチタイヤを問わない重厚で上質な乗り味は一段と磨かれ、HV車に迫る静粛性、乗り心地の進化が見られた。特に15インチタイヤを履くノアGは路面の突起、うねり、高速道路の継ぎ目などを乗り越えたときのスムースないなし方、ショックの角が取れたまろやかな乗り味が好ましい。全列の乗り心地の良さで選ぶなら15インチタイヤ装着車を薦める。真夏の高速中心の実燃費はHVが約20km/L、ガソリン車が約13km/hだった」。

 そんなノア&ヴォクシーの3代目は2021年9月にオーダーストップ。2022年1月、ついに4代目が発表されたところである。ここではあえて新型ノア&ヴォクシーについては触れないが、初代から先代に至るノア&ヴォクシーの進化を確認していただければ幸いだ。中古車選びのポイントにもなると思う。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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