【試乗】いまや超貴重な5リッターV8NAエンジン! レクサスIS500が魅せた「下山仕込み」の超高レベルな走り (1/2ページ)

この記事をまとめると

■NAの5リッターV8を搭載するレクサスIS500 Fスポーツ・パフォーマンスが発売された

■そのローンチを記念した限定モデル「First Edition」に中谷明彦さんが試乗

■下山テストコースで躾けられた足まわりのセッティングが絶妙でバランスがいい

ISが手に入れたのは481馬力のNAエンジン

 レクサスのスポーツセダンとして人気の高いISに、トップパフォーマーとしてのスーパースポーツセダンとなるIS500が、いよいよ国内にも登場する運びとなった。レクサスはそれに先駆けてIS500 F スポーツ・パフォーマンスに「First Edition(ファーストエディション)」と銘打った500台の限定モデルを設定し、抽選予約を行った。おそらくすでに限定枠をはるかに超える予約が殺到していると思われるが、その貴重な1台に試乗することができた。

 IS500は、すでに北米で先行販売されていて人気が高く、日本国内への導入を希望する声も多かったという。基本的にはIS350のシャシーを補強し、5リッターV8エンジン(2UR-GSE)を搭載。最高出力は481馬力を7100回転で発揮し、最大トルクも535Nmを4800回転で発生させている。481馬力と言うのはいまやこのクラスとしては目立った数値とはいえないが、5リッターという大排気量と自然吸気・ナチュラルアスピレーションエンジンで発生しているのが興味深い。

 とはいいつつ、このエンジンはトヨタが得意とするD4-S、つまり筒内直接噴射とポート噴射を回転により使い分ける高効率エンジン吸気方式を採用しており、その噴き上がりレスポンスの良さをたびたび報告している。D4-SはIS350のV6エンジンに初搭載され、また現在はトヨタのGR86水平対向エンジンにも採用されていて定評がある。その最大の特徴は、低速域のトルクを筒内直接噴射で稼ぎだし、高速でのパワーはポート噴射によって導き出すということにある。これによりターボ過給を伴わなくても481馬力と535Nmという高出力を可能としているのだ。

 V8エンジンをターボ過給するとすればツインターボ化が必要となり、それに伴いインタークーラーや補機類などの追加設置により重量が増え、スペース効率も悪化する。自然吸気としたことでISの比較的コンパクトなエンジンルームに5リッターの大型V8ユニットを搭載することが可能となったといえる。また、エンジンが縦置きである特性を生かし、エンジンルーム左右にはサスペンションダンパーユニットを支える大きな砲筒がスペースを占めている。

 サスペンション形式はフロント・ダブルウイッシュボーンで、これもエンジンを縦置きにすることによって上下の長いサスペンションアーム配置が可能となったものだ。ワイドフェンダー化でホイールハウスが大きく取られ、前輪の転舵角が大きく取れ、最小回転半径は5.2mと小さくすることが可能となっている。

 この大きなハンドルの切れ角は、たとえばドリフト走行でカウンターステアを当てる際に、より深いドリフトアングルが可能となり、このクルマがそうした走行場面においても、優れた特性であることを垣間見せている。サスペンションアームは上下ともアルミで構成されており、バネ下重量低減と高剛性化、そして振動の収れん性の良さなど、乗り心地や操縦安定性で寄与させているのである。

 リヤアクスルにはトルセンLSDが装備され、マルチリンクのリヤサスペンションで支えている。タイヤはフロントに235/40R19、 リヤは265/35R19で、前後異サイズとしてハンドリング性能とパワーのバランスを高める狙いが受け取れる。とはいえ最近ではホンダ・シビックタイプRがFF・2リッター300馬力仕様でありながら、前後に265サイズのタイヤを装着していることを考えると、IS500ほどのパワーのあるクルマであれば、さらに幅広いタイヤを装着しても良いだろう。

 ファーストエディションには、マットブラックにペイントされた特殊な専用デザインのBBS社製ホイールが装着されている。そして、そのホイールの中はフロントには356mmの大径鋳鉄製ディスクブレーキとブラックに塗装されてレクサスの文字が浮かび上がる専用ブレーキキャリパーを覗き見ることができる。

 リヤブレーキは片持ちスライド式のディスクであるが、それでもディスク型は323mmと大径化されていることも見逃せない。試乗は一般道で行ったため、ドリフト走行するような限界域でのテストは行えないが、こうした性能の一端を垣間見ることができると思う。

 室内に乗り込むと、ファーストエディションのオーナメントパッチが配置されたセンターコンソールが目に入る。見慣れたISのダッシュボードデザインながら、ところどころにスウェード皮革があしらわれたりステッチが縫い込まれたりして、特別な雰囲気を醸し出している。

 メーターは8インチでLFAで採用されたようなギミックのある液晶表示だ。ドライブモードを選択することによってその表示パターンが切り替わる。また、ステアリングスポークの右側のスイッチで操作すると、メーターの中の表示アイテムを切り替えることも可能だ。

 エンジンを始動すると、まずメーターの中にスタートアップの表示がアニメーションで展開され、少し間をおいてV8エンジンが始動する。エンジン音自体は決して派手なものではなく、かといってV6のような 軽々しいものでもない。

 アクセルをブリッピングすれば素早く自然吸気らしい反応を見せるが、それでもパワーを予感させるようなサウンドが吐き出されるわけでもないのが意外だ。ドライブモードはエコ、スポーツ、スポーツ+と3モードが用意されており、停止状態でこれを切り替えてもエンジンサウンドが変化するようなことは起きなかった。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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