もはや日本で敵なし! N-BOXがいつまでも独走する理由とその裏にある弊害 (2/2ページ)

現行N-BOXは先代型からの乗り替え需要を継承

 N-BOXは「全高1700mm以上+スライドドアの装着」という好調に売られるクルマの条件を満たした上で、軽自動車のライバルとなるタントやスペーシア、さらにコンパクトカーのルーミーと比べても、快適性を高めた。内外装は上質で、乗り心地も優れ、なおかつエンジンなどのノイズは小さい。

 N-BOXがここまで快適性を高めた理由は、大量の販売を目的とするからだ。N-BOXは、先代型の時点でも国内におけるホンダの主力車種だった。従って現行型が失敗すれば、大きな打撃を被ってしまう。また成功すれば大量な販売を見込めるから、現行N-BOXは先代型以上に多額のコストを費やして開発された。

 その成果により、現行N-BOXは先代型からの乗り替え需要を継承できた。先代型も車内は十分に広く、4名乗車が快適で自転車も積めたが、販売店で現行型を試乗するとさらに快適になっている。現行型では安全装備や運転支援機能も進化したから乗り替えも進んだ。

 その結果、N-BOXの月別販売状況を見ると、国内で売られるホンダ車全体の30%を超える。多い時には40%に達する。そこに1.5リッターエンジンを搭載するコンパクトなフィット、フリード、ヴェゼルを加えると80%近くに達するのだ。

 ホンダのN-BOXやコンパクトな車種の好調な売れ行きは好ましいが、弊害も生じてきた。それはホンダのブランドイメージが、N-BOXなどの高人気によって小型化されたことだ。前述のとおりN-BOXとコンパクトな車種が売れ筋になり、上級車種が衰退した。ホンダがスズキのようになってきた。

 ただしスズキは長年にわたり軽自動車を中心に販売してきたから、低価格の車両を大量に扱って利益を出せる体質になっている。ホンダはそうではない。

 従って今のホンダはブランドイメージをアップサイジングする必要に迫られており、新型のステップワゴンやZR-V、シビックe:HEVなどに力を入れている。とくにステップワゴンは、ブランドイメージの改革に大切な認知度の高い人気車だから、今後も特別仕様車の追加などによって着実に進化させる。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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