カングーで「1日かき氷屋」を開店!? ラゲッジを使った「映え写真&動画」コンテストにWEB CARTOPが挑んだ! (2/3ページ)

新型カングーはブルーカラーからホワイトカラーにジョブチェンジ!?

 今回の主役であるルノー・カングーは4代目となる新型で、まだ日本に導入されてから1年も経っていない正真正銘のニューモデル。まだまだ街なかで見ることの少ないモデルだ。

 せっかくお借りしたので、僭越ながら少し”カングーにわか”の筆者がインプレッションもして見たいと思う。ひょっとするとカングーファンの方は「こいつは何もわかってない!」となるかもしれないが、にわかなのでお許しあれ。

 さて、第一印象だがこの新型カングー、「随分と大きいなぁ」というのが正直なところ。先代のカングー(しかも限定車のディーゼル+MTモデル)は諸事情で編集部で半年ほど乗っていたのだが、あれと比較するとなかなかにデカい。信号待ちで隣に停まったLクラスミニバンに肉薄するサイズ感であった。

 カングーといえば、筆者のようなにわかですら「フランスの商用車」として認知している1台である一方、日本ではその独特の雰囲気がウケており、本国が若干引くくらい、世界屈指のカングー大国であることでもお馴染みだ。事実、カングージャンボリーと呼ばれるイベントには全国から1000台以上のカングーが集まるほど。この異質さは、トヨタ・プロボックスがフランスで大ウケしていて1000台規模のオフ会が毎年開かれているといえば、わかりやすいのではないだろうか。

 なので、カングーというクルマは、筆者のなかでは商用車であるがゆえに、現場でバリバリ働くブルーカラーの鏡ようなクルマなイメージを持っている。本国には日本にも導入されている乗用モデルもあるのだが、どうしても前者のイメージが先行する。だから、外観はいくら傷ついても問題ない無塗装樹脂バンパーに耐久性だけを考えた鉄ホイール、とにかく安価なソリッドな塗装、インテリアは仕事で武器になるなんでも入る豊富な収納と、とにかく現場至上主義な1台という認識なのだ。

 しかーし、今回借りたこのカングーは違う。いや、たしかに商用車感は満載なのだが違うのだ。現行型は現場丸出しなブルーカラー感がまるでないではないか。なんだこの違和感は!? なのでこの”違和感の正体”を乗りながら探してやろうじゃないか。

 まずステアリングを握って、インパネ全体を見たらすぐにその違和感がわかった。メーターがルノーのそのほかの乗用車と同じ液晶パネルだ。どこか質素なアナログメーターを綺麗さっぱり捨てている。そしてその横には大型ディスプレイが備わる。先代までのカングーは無理矢理2DINモニターをぶち込んだみたいな、やっつけ感ある仕立てだったのに、現行ではインテリっぽいモニターが標準装備だ。それにステアリングは革巻きだ。商用車なんだから古き良きウレタンでいいではないか!? どうしちゃったんだカングーよ。

 と、ひとりで憤っているカングーにわかの筆者は早々にある”重大なこと”を知る。この日本で展開されているカングー、先述した本国で展開されている乗用モデルベースとのことだ(カメラマン談)。そりゃ現場職感がないわけだ。何も知らずに先入観で観察してしまった。申し訳ない!

 さて、本モデルが”乗用ベース”とわかったところで、気を取り直して各部を見ていこう。

 エアコンはルーテシアなどとほぼ同じデジタル表示のデュアルエアコン。シフトノブも乗用モデルに相応しい使い勝手の良いデザインへ変更され、助手席のインパネにはシルバーっぽい色の木目調加飾まで装備された。いや、乗用ベースなのはわかった。わかったのだが、それにしても先代と比較して、あまりにも普通なクルマになってしまっているものだから思わず、「カングーよ、お前はどうしちまったんだ!?  転職か? 乗用車に転職したいのか!?(※何度も言うが日本はそもそも乗用車のみ)」と問いかけずにはいられない。そんな雰囲気を持っている。

 もうこの新型カングーは、筆者から言わせれば「ブルーカラー出身のホワイトカラー(役職は営業係長)」だ。「現場は飽きたので次は小洒落たオフィスから仕事現場を支えますワ」とでも言いたげな感じがしてくる。顔もよくみるといままでの愛嬌ある丸っこい雰囲気から、角眼鏡で妙にインテリ臭い雰囲気にイメチェンしているではないか。

「なるほど、そういうことだったのかカングーよ。お前の意思はよくわかった」

 と、ややイジってる評価をしているが、もちろんこれは悪いことではないと思っている。現場を知り尽くしているからこそ、次の領域へカングーはステップアップしたかったのだろう。いや、きっとそんな野望があったに違いない。そして、待望の新型になったことでその野望が叶ったのだ。

 実際、「なんだこれは!」と言わずにはいられないほど先進装備などが充実している一方で、仕事をするうえで「あったらいいな」な機能は先代から受け継がれている。普段使い重視の乗用モデルといえど、やはり商用車の純血統なのだこのクルマは。カングーの代名詞的存在であるルーフにあるバカでかい収納は引き続き装備されていたりもする。

 これほどまでに優秀な進化を遂げた新型カングーなので、筆者から言わせれば”無駄にハイクラス”になってしまっているとも言える。なので、きっと彼の転職活動は難儀するはずだ。「泥臭い現場でバリバリ働いてきた一方で、マルチな営業もできる優秀な人材」というハイスペ具合ともなれば、雇うのもいい意味で大変だろうからだ。「こんなバリキャリ、うちでは雇えません」と、優秀すぎるが故に面接落ちもあり得る。価格も若干上がっているので、「俺、この額じゃないと働かないんで」と、自身の価値を誇示しているようにも感じ取れる。言い過ぎだろうか……?

 気になる乗り味だが、ここには乗用モデルといえど絶妙にブルーカラー感が残っていると感じた。タイヤは205/60R16というサイズで、この扁平がまた上手いことカングーを上質かつ程よく引き締めてくれている印象だ。抽象的だが、「柔らかいが芯がある」といった雰囲気だろうか。「あぁ商用車だなぁ」といった柔らかい乗り味がベースにはあるのだが、意外にもステアリングの応答性はいい。高速安定性もさすがは欧州車といったところで、全高が高いにもかかわらず、しっかりとした反応があるので不安定な感じはまるでしないではないか。左右にレーンチェンジをしてもタイヤに追従してしっかり車体がついてきてくれる。この技には正直驚いた。ほぼ空荷でこれなのだから大したものだ。

 そして、先述したとおり大きなボディではあるものの、取りまわしが非常にしやすい。これにも驚いた。まるで5ナンバーのコンパクトカーを転がしているイメージだ。この取りまわしの良さが印象的で、「ベースが商用車である」と、改めて感じ取ることができた。

 シートもいい。さすがは「商用車がベース」と言っていいのかわからないが、座っていてもあまり疲労感を感じなかった。長くシートに座ることが多いであろう現場の人の声がしっかり反映されている気がする。筆者のなかで商用車のシートといえば、ビニール製の安っぽいイメージがあるが、このカングーの前ではそんなイメージは通用しない。これなら3日くらい寝ないで仕事できそうだ。むしろ、良すぎる感じさえした。まぁ今回のカングーはホワイトカラーに転職したのだからこれでいいのだろう。

 エンジンは、今回はガソリンターボモデルをお借りしたが、カングーの性格を考えれば必要十分な出力とトルク特性で、高速巡航も問題なかったほか、燃費も上々であった。ただ、ミッションは先代同様にEDCとなっているので、初動のもっさり感がやや目立った。走行中のレスポンスはとくに不満なしだが、総合的に見れば、今回の新型にするにあたってトルコン式ATを採用しても良かったのではないかと感じた。にわかが生意気言ってすまん、カングーよ。

 と、乗れば乗るほど「ブルーカラー出身のホワイトカラー(役職は営業係長)」と言ったキャラクターが個人的にしっくりくる、そんな新型カングーであった。彼の転職人生は優秀すぎるがゆえにきっと今後は高い壁が立ちはだかることだろう。

 全国1億のカングーファンの皆様にはふざけたインプレをしてしまい申し訳ない。


WEB CARTOP 井上悠大 INOUE YUTAI

編集者

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