【試乗】雪道で見せつけられた電動車の優位性! レーシングドライバーが最新日産車を雪上で一気乗り!! (2/2ページ)

電動車は雪道との相性抜群だ

 アリアと同じくエクストレイルも前後2モーターを搭載するe-4ROCEを採用していて、雪道での適合性はアリアと同等以上の素性を示してくれる。車両重量は1880kgでアリアより軽いが前後重量配分は58:42となっている。また、床下に大容量バッテリーを搭載していないので重心高は一般的だ。そのためか雪道での操縦性は通常のクルマに似通ってはいる。

 前輪用モーターは150kW(204馬力)、後輪用モーターは100kW(136馬力)で最大トルクは前330Nm、後195Nmと強力だ。雪道ではアクセルを全開にするようなシーンはなく、余程の急な登坂でない限り余裕がある。従来のSUVらしいハンドリング感覚と新次元のe-4ROCEによる制御の融合が魅力で、従来型SUV車の可能性を電動化により大きく切り開いたモデルといえるのだ。

 軽自動車EVのサクラも試したが、FFの前輪2輪駆動とはいえ195Nmという、内燃機関エンジンなら2リッター車並みの大トルクを0回転から発せられるので、山道でも力強い。加えて駆動力の細やかな制御が効率のよい走りと滑りやすい路面にも高度に適合していて、サクラが山岳エリアでも高い素質を示していることが伺えた。

 電動モーターで前輪を駆動するという意味ではe-POWERのセレナも同様な資質を備えている。ミニバンで車重の嵩むセレナにとって、駆動モーターのトルク特性は山道、雪道に優れた適応性を見せる。トルクフルで滑り易い登坂路を駆け上がれ、e-Pedalによる回生をしながらの下りでの安心感は心強く感じられるのだ。総じて電動駆動車こそ雪道、山道にはベストマッチするパワートレインなのだと改めて印象付けられた。

 そして、最後に試乗するのはフェアレディZニスモだ。こちらは100%ICE(内燃機関)のハイパワーモデルだ。しかもマニュアルトランスミッション仕様。電動車に試乗した直後に雪道へ走りだすと、いかに電動車が優れているかを再認識させられる。

 クラッチを踏みギアをローに入れ、サイドブレーキを降ろしつつ半クラッチからアクセルを踏み込んでスタート。すでに身体に沁み込んだ操作なだけに、特別な難しさを感じることはないが、ビギナードライバーにとっては雪道の坂道発進は難易度が高いだろう。

 スタッドレスタイヤを履いているとはいえ、後輪2輪駆動ではパワーをかけ過ぎればすぐに空転を引き起こしトラクションコントロールが作動する。かなり丁寧に操作してもトラクションコントロールの介入なしに発進させるのは困難であり、いかに電子制御に助けられているかの再確認にもなる。

 氷上であればパワースライドさせて自由自在にドリフトさせての走行も可能だが、一般道ではライントレースさせて走るだけ。トラクションコントロールをオフにすれば低速ドリフトは楽しめるが、それは単に不安定を引き起こしているだけでダイナミックな楽しさとはいえない。ニスモは専用開発のサスペンションが採用され、空力を磨いた外装も見応えがある。

 雪道にフォーカスしたものではもちろんないが、雪煙をたてながら走り去るシーンはインパクトがあった。思えば1970年代に雪のモンテカルロラリーを制したフェアレディ240Zに魅せられ、いまも憧れている。フェアレディZのDNAは雪の山岳路でも培われたものだったことを思い起こさせられた。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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