単に価格勝負で日本市場を狙っていない! BYDの侮れないブランド戦略とは (2/2ページ)

BEVの普及に有効なのはシェアリング

 今回の発表会では、メディアからBYDのローコストBEVともいえる「シーガル」の国内導入についての質問が出ていたが、日本だけではなく中国以外のマーケットへのシーガルの投入は慎重な姿勢を見せているように見える。これは、東南アジア市場ではより強い傾向があり、新車購入時に再販価値を購入対象車選びのポイントとして重視する傾向にあることに注目しているようである。

 ICE(内燃機関)車より技術進歩の早いBEVの再販価値は残念ながらそれほど期待できないのが現状。再販価値を維持するにはブランドステイタスの確立というものが大切であり、単に割安イメージの強いモデルを量販させてブランド認知をはかるという手段もあるが、これは認知が広がるだけでステイタスは上がらない。

「再販価値を意識していますよ」というアピールには、手厚い保証の設定は有効なのである。今回の発表会にて、BYDは日本国内で認定中古車の展開も進めていくとしていたが、それも再販価値維持にとっては大切な施策といっていいだろう。

 さらに、今回の発表会では、ディーラーネットワークの拡充予定などにも触れていたが、その次に期待したいのはBYDならではの「ファイナンスサービス」の充実であろう。すでに日本の「4年縛り」となる政府補助金に対応した(補助金交付を受けると4年間名義変更できない)支払プランの残価設定ローンは用意されている。

 筆者は諸外国のようにローンやリースでの新車購入が日本でも当たり前にならないとBEVの普及はなかなか進まないものと考えており、これは現金一括払いがまだまだ多い日本特有の事情といってもいいだろう。欧州のようにかなりエキセントリックに「BEVしか乗ってはダメ」というつもりはないが、日本の消費者でもBEVに興味を持っている人は多く、選択肢が少ないことに不満があるといった声も聞く。しかも、すでにBEVを購入して自宅に充電設備を設置すれば、よほどの理由がない限りはICE車に戻ることは考えにくいともいえる。

 メーカー系個人向けカーリースが、「サブスクリプション」というアプローチでプロモーションしているようだが、ある人から「BEVはシェアリングでこそ普及していく」と聞いたことがある。所有して乗るにしても、リースや残価設定ローンの活用で「サブスク感覚」で乗り、月々の支払額に変化なく(もしくは限りなく変化なく)短期間で入れ替えながら乗り続けるというのが、ICE車よりはどうしても同クラスでは割高となってしまうBEVの理想的な乗り方といえるかもしれない。

 日本はまだまだ「金利負担がいやだ」などの理由で現金一括払いというものが根強く残っている。BYDがこの消費者感覚を変えることができるファイナンスプログラムを用意できれば、BYD車の販売にも弾みがつくのではないかと考えている。

 ちなみに残価設定ローンという概念を日本に持ち込んだのは外資ブランドである。リースや残価設定ローンでメリットを高めるのには、再販価値を高めるのは必至(そうすれば月々の支払いを抑えることができる)。日本車が世界で引っ張りだこな理由も再販価値の高さがあるのは間違いない。

 BYDの海外展開はブランドステイタス構築を優先しているように見えてならないし、それが正しい判断だと筆者は考えている。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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