【試乗】見た目に差はないが走りに違いアリ! 新型シビックはCVTかMTか悩ましいその中身 (2/3ページ)

硬めの足と拡幅されたトレッドの効果で4輪が路面を捉える

 エンジンを始動すると非常に静かで振動の少ない回転特性を感じ取ることが出来た。液体封入式のエンジンマウントが採用され、車内への遮音性も大幅に高めることで高級車レベルの静粛性を実現しているといえる。

 搭載するエンジンは1.5リッター直列4気筒直噴ターボエンジンで、ターボチャージャーを新設計して微低速から過給レスポンスを高め、優れた出力特性を可能としている。その最高出力は182馬力で最大トルク240N・mは1700回転という低回転から幅広いレンジで発揮される。

 ただ、それはハイオクガソリン仕様ということで可能となった側面もある。従来のシビックセダンはレギュラーガソリン仕様であったがハッチバック5ドアモデルはハイオク仕様として高出力特性を誇っていた。今回の新型シビックではその手法が引き継がれ、5ドアハッチバックに統一化されたことにより燃料もハイオク使用であることが継承されたと言えるのだ。

 走り始めるとCVTのトルコンスリップロスが極めて少なく、エンジンが先行して回転が上がり、車速はあとから追いかけるといった CVT的特性は大きく抑えられている。

 かなり低速からロックアップクラッチが作動するかのように、一定の回転を保ったまま車速をゆるやかに高めていくことが可能で、エンジン回転が大幅に先行しないので静粛性にも貢献しているといえる。

 一方、動力性能で言うとアクセルの踏み込みに対してエンジンのトルクのピックアップに合わせるかのようにCVTが変速していくが、それでも強力な動力性能が発揮できるとは言い難い。1.5リッターターボと考えてもやや力不足感は否めないのだが、それは1370kgに達する車両重量が影響していると言えなくもない。

 近頃は、電気自動車やハイブリッド車の電動アシストなどにより、とくに走り始めの電動モーターのトルクピックアップの良さが一般的に認知されている傾向が高まっているので、純粋なガソリン車の初期トルクの出方に不足感を感じてしまう人もいるのではないかと思う。

 操縦性は拡幅されたトレッド効果もあり、4輪が路面をしっかりと捉えている感覚が伝わる。コーナーではロールが非常に少なくステアリングの操作性も極めて高い。

 今回、電動パワーステアリングの制御が見直され、操舵初期の応答性と正確性が改善されたこと、また直進時の操舵力が増して直進安定感が高まったことなどが特徴的だ。

 ただ、サスペンションは全般的に設定が硬めで、とくにショックアブソーバーの微低速域の動きが固く、路面の段差や凸凹など、少しハーシュを強く車体に伝える傾向が感じられた。一方で、ボディ剛性はねじり剛性なども含めて向上させられており、ハーシュが高まってもそれを瞬時に収束させていくので乗員が不快に感じるレベルにまで増幅されることがない。より速度の高い領域で巡航して走れば、路面のそうした微低速でのNVHは気にならなくなる方向のセッティングであると言えると思う。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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