国産最強のショーファーカーはどっち? センチュリーと新型アルファードを徹底的に比べてみた (2/2ページ)

居住性で勝るアルファードだがセンチュリーの格式も捨て難い

 後席の装備類は、ともにショーファーカーとして十分な内容だ。が、いまや先進感ある装備類の充実度では、新型アルファードのエグゼクティブラウンジが、スーパーロングオーバーヘッドコンソールや理にかなった上から下に下がるパワーサイドサンシェード、左右それぞれに用意されたスマホサイズのリヤマルチオペレーションパネルなどもあって、一歩リードしている印象だ。

 また、センチュリーの標準シートはウールファブリック“瑞響”。じつは本革よりウールファブリックのほうが上等という考え方もあり、かけ心地の面でもウールファブリックのほうが優位だったりする(とはいえ本革シート極美革は55万円のオプション)。

 さらに、センチュリーの空調はセダンタイプとしては稀にみる4席独立温度コントロールフルオートエアコンとなる。

 ちなみに後席のマッサージ機能は、センチュリーは後席左側席が“上座”というセンチュリーの伝統から、後席左側のみ。アルファードは、エグゼクティブラウンジシート左右両席に装備されている。ただし、マッサージ機能そのものはさすがにセンチュリーのほうが優れている印象である。

 センチュリーもアルファードもショーファーカーとして使われる場合、後席左側席が上座となって使われるはずだが、センチュリーはスイッチひとつでフロントシートがスルスルと前方スライドしながらヘッドレストが畳まれ、フットレスト機能付きのオットマンが出現するなど、ショーファーカー、後席上座としての配慮にこと欠かない。アルファードのエグゼクティブラウンジなら同様の機能を備えてはいるが、動作のきめ細かさではセンチュリーだろう。

 後席の乗り心地はどうか。この点に関しては、純然たるショーファーのセンチュリーが上を行く。当然、低重心で足まわりを固める必要はなく、ショーファーカーとしての優雅で快適無比な乗り心地に徹しており、タイヤ&ホイールは225/55R18+ノイズリダクションアルミホイールの組み合わせとなる。

 ちなみに真の高級シート地であるウールファブリックのシートは、自動車用シートとは一線を画す超高級ソファそのもののかけ心地であり、それが振動やショックのない乗り心地にもひと役買っている。本革シートに比べ、背中、お尻が滑りにくいのも、着座姿勢の安定感、心地よさに直結するようだ。

 一方、225/65R17サイズのタイヤを履くアルファードのエグゼクティブラウンジの乗り心地は、良路ではすこぶる快適でフラットだが、鋭利な段差の乗り越えの場面では、多少の突き上げを感じることになり、荒れた路面を含む乗り心地の良さではセンチュリーに一歩譲る……ということになるだろう。

 また、先代本革シートのウィークポイントだった、ブレーキング時にお尻が前に滑ってしまう点は、新型ではシート前端を上げる(角度を付ける)ことでほぼ改善されているものの、センチュリーのウールファブリックシートの素晴らしいかけ心地、身体の収まりの良さには一歩譲るという印象だ。

 ショーファーカーの後席では車内の静かさも求められるが、センチュリーと先代アルファードの比較ではセンチュリーが圧倒。しかし、新型アルファードは車内の静粛性にも徹底的にこだわった結果、センチュリーに迫る車内の静かさを、静粛性に不利なボックス型ボディで実現している。

 ただし、両車ともにハイブリッドだが、エンジンが始動したときのエンジンノイズの車内への侵入度合いでは、センチュリーが優れている。それもそのはず、遮音、吸音性能のコストのかけ方に加え、そもそもセダンタイプのほうがエンジンルームとキャビンを仕切る部分の高さが低く、有利とされているからだ。

 ノイズ発生源のエンジンが、アルファードは2.5リッター直4、センチュリーは5リッターV8であることもあるだろう。

 最後に、センチュリーのオーナーならまず気にしないであろう維持費だが、新車時の自動車税は5リッターのセンチュリーだと8万7000円。重量税は2030年燃費基準85%を達成しているため減税50%で3万7500円が約1万8800円に。環境性能割支払い税額は1%で約16万4200円となる。

 一方、2.5リッターエンジンを積むアルファードのHVは、新車時の自動車税が4万3500円。重量税はエコカー減税対象グレード車になるため3万7500円が優遇され0円に。環境性能割支払い税額は非課税で0円。センチュリーは車両本体価格でアルファードの最上級・最高価格グレードの倍以上だが、支払う税金もそれなりになるというわけだ。

 結論としては、アルファードのほうがよりリーズナブルに、後席の乗降性や先進感、キャプテンシートによるパーソナルな居住性、先進運転支援機能=トヨタセーフティセンスの先進度などを含めたショーファーカーとしての資質では、いまや逆転していると言っていいかも知れない。ただし、優雅さでいえば、センチュリーの3ボックスタイプのボディ形状がもたらす奥ゆかしさで優位に立つことはもちろんだ。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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