ヒョンデがネッソを投入してもFCV時代は来ない! 水素ステーションの数が「増やせない」根本的な問題とは (2/2ページ)

FCVの本格的な普及にはまだまだ大きな課題が残る

 一方、水素ステーションの整備はあいかわらず伸び悩み、なかなか解消しそうにない。最大の課題は、水素という燃料の特性に負うところが大きい。水素は、もっとも軽くて小さな元素だ。このため、水素より大きな元素で作られたタンクから外へ出てしまう可能性を否定できない。万一の事故的な漏洩も含め、安全を確保するためには天井のない水素ステーションでなければならない。つまり、ビルの1階に設置することはできない。

 水素ステーション1件を運営するのに必要な土地の広さは500平方メートル(約151坪)なので、それだけの広い土地を持つ人が、建設に数億円掛かるとされる水素ステーションを開設するはずもない。ガソリンスタンドのようにビルの1階に設置できるなら、いずれ採算は合うかもしれない。だが、ビルを建てられないのであれば、郊外の地価の安い場所にしか水素ステーションは整備できないのである。

 MIRAIのホームページで検索できる水素ステーションが157軒にとどまるのも、地価と比べ採算が合わないからだ。そして、多くのステーションは、水素を扱う岩谷産業や石油会社のENEOS(エネオス)の経営であるのも、採算が合いにくい証といえそうだ。なおかつ平日の昼に営業しているのは6割程度で、また全157軒のうち17か所は移動式か臨時の施設で、恒久的なステーションではない。

 初代MIRAIが2014年に売り出されてから8年目に入り、この状況ではFCVの普及は難しい。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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